「平成の京町家」の空間コンセプト

「平成の京町家」の基本となる空間コンセプトは,内と外,人と自然,家とまちを豊かにつなぎ,関係づける「中間領域」を設けることにあります。
この中間領域とこれに接する外部空間(庭や道路)とを合わせた空間を「環境調整空間」と呼び,「平成の京町家」の外観デザインや温熱環境調整機能の考え方,コミュニティ形成までを規定する大原則としています。

「平成の京町家」開発方針

「平成の京町家」開発方針

「環境調整空間」のイメージ

「環境調整空間」による京町家の知恵の継承


京町家に特徴的な深い軒庇は,外観の特徴の一つですが,その下部の空間は,商品展示や休憩の場,お祭りの空間として多様に使われ,公的な通り空間と私的な居住空間をつなぐ半公共的な空間を形成しています。京格子は道ゆく人からは内側が見えにくく,家の中からは外の様子がよく見えるようにできており,柔らかい防犯装置・プライバシー確保のための装置としての機能を持っています。
また,通り庭は屋内にあっても半公的な空間であり,靴を脱ぐことなく大方の接遇はこの場でなされ,家族全員が接遇を共有することによって,家族ぐるみの町内付き合いを支え,コミュニティを育んできました。
さらに京町家は植栽が施された奥の庭を有しており,表の通りと奥の庭との温度差(温度差による気圧差)により人工的な風の流れを屋内に取り込む工夫がなされていました。奥の庭と座敷との間にある縁側空間は,夏は,涼しく過ごすために建具の取替えや簾の設置等によって半屋外的な空間となり,風の通り道となる一方,冬には縁側空間の建具を閉じることによって,座敷に対して温熱環境上の中間領域を形成し,室内の寒さを和らげる等の効果がありました。
こうした中間領域の考え方を発展した「環境調整空間」により,伝統的な京町家の知恵を継承することができるのです。

天窓
天窓 提供:(株)ハチセ
通り庭
通り庭
深い軒下空間と京格子
深い軒下空間と京格子(無名舎 吉田家住宅)
出格子
出格子
夏のしつらい
夏のしつらい(水野家)
簾戸(すど)
籐筵(とうむしろ)等
冬のしつらい
冬のしつらい(水野家)
雪見障子、襖等 

写真:水野克比古氏
出典:「京町家の再生」(財)京都市景観・まちづくりセンター編 2008年


「環境調整空間」の機能


リビング等の主要な生活空間と屋外の間に,襖や引き戸によって仕切られた縁側や玄関土間等の環境調整空間を設けるダブルスキンの考え方によって,季節や状況に応じたフレキシブルな空間の利用ができるとともに,冷暖房で環境を制御する空間の範囲を必要に応じて調節することにより,効率的なエネルギー利用が可能となります。
また,坪庭や奥庭は,低層高密な京都のまちなかにあっても,屋内に光や風を効率的に取り込むための有効な装置にもなります。

「環境調整空間」の分類

「環境調整空間」の分類
「環境調整空間」は,アクセス系と庭系に分類することができます。 

アクセス系
「表」の空間であり,みちやまちとの関係性が重視され,商業空間や交流空間として利用されてきました。 

例:通り庭,広い玄関土間,深い軒下空間
庭 系
「裏」の空間であり,庭との関係性が重視され,季節やシーンに応じた多様な利用が可能な縁側や,庭を観賞するための空間として利用されてきました。 

例:庭に面した縁側,坪庭


環境調整空間の様々な利用方法例

冬の使い方

冬の使い方:鍋をする

「環境調整空間」と生活空間の間の建具を閉めることで,暖房が必要な空間を小さくできるとともに,「環境調整空間」が温熱的な中間領域となり,生活空間からの熱損失を小さくすることが期待できます。


中間期の使い方

中間期の使い方:夕涼みをする

建具を全て開放して,外気を取り入れます。あらかじめ風の通り道を確保し,効率的に外気を取り込めるよう設計することで,初夏や晩夏といった季節でも,冷暖房に頼ることなく快適に過ごすことができます。


夏の使い方

夏の使い方:水遊びをする

庭に面した縁側や深い軒下空間の日陰や庭の木陰は,子供にとって格好の遊び場として利用できます。また,室内は,建具を自在に開閉することで,冷房が必要な空間を必要最小限とすることができるとともに,「環境調整空間」が温熱的な中間領域となり,生活空間からの熱損失を小さくすることが期待できます。


ハレの日の使い方

ハレの日の使い方:祭りのしつらえ

表通りに面した深い軒下空間や広い玄関は,御近所さんを気軽に招きいれたり,祭りの雰囲気を共に楽しんだりする空間として利用できます。こうしたコミュニケーションが,まちとのつながりを生み出すことにつながります。